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品質設計開発学分野│京都大学 大学院 農学研究科 農学専攻

Laboratory of Food Quality Design and Development Division of Agronomy and Horticultural Science Graduate School of Agriculture, Kyoto University

研究テーマ

ダイズ種子貯蔵タンパク質の立体構造形成機構

ダイズ種子貯蔵タンパク質の立体構造形成機構

 真核細胞小胞体で生合成されたタンパク質の大部分は、糖鎖修飾やジスルフィド結合形成を経て立体構造が完成します。変異など何らかの原因で構造形成がうまく進行しないタンパク質の場合は小胞体に留められ、構造形成のこころみが何回も小胞体内で繰り返されます。このように、構造形成に失敗したタンパク質が小胞体に蓄積することを、‘小胞体ストレス’といいます。私たちは、ダイズ子葉で小胞体ストレスによって誘導される遺伝子を探査しプロテインジスルフィドイソメラ―ゼファミリー(PDIファミリー)をはじめとするタンパク質構造形成を担うタンパク質、異常タンパク質分解系、抗酸化に関連するタンパク質などの多数の遺伝子を同定しています。タンパク質がジスルフィド結合を形成しつつ構造が形成される酸化的フォールディングではPDIファミリーなどによるタンパク質のチオール基酸化反応が生じます。このチオール基酸化反応は最終的には小胞体に活性酸素を発生させるため、酸化ストレスを引き起こすことになります。さらに、過度の小胞体ストレスがおこると細胞はプログラム死に至ります。このような状況を回避するために、構造形成に失敗したタンパク質は特異的な分解機構によって分解除去されます。これがタンパク質の品質管理です。ダイズやトウモロコシでも、変異した種子貯蔵タンパク質が品質管理機構で分解されてしまう例が知られています。したがって、高品質化のために遺伝子改変を施した種子貯蔵タンパク質が種子に効率的に蓄積されるためには、その立体構造が迅速に形成されるか、あるいは何らかの方法で小胞体の品質管理による分解を免れる必要があります。品質設計開発学分野では、このような問題を解決して高品質化タンパク質を高生産するための基盤となる研究を行っています。

 すなわち、ダイズ種子貯蔵タンパク質のジスルフィド結合形成に関わる酵素の構造と活性および基質特異性との関係や他の分子シャペロンとの協調的作用機構を解明し、種子貯蔵タンパク質の構造形成での役割を明らかにする研究を行っています。具体的には、PDIファミリーなどのタンパク質酸化還元酵素を同定し、それらの構造と触媒反応機構、基質特異性および活性調節機構との関係を追求しています。これまでに、少なくとも5種類のPDIファミリーが、ダイズ種子の登熟過程で構造形成途中の種子貯蔵タンパク質と相互作用することを見いだしました。これらのPDIファミリーはいずれも複数のドメインから構成されるマルチドメインタンパク質であり、各ドメインが担っている機能を大腸菌で作製したリコンビナントタンパク質を用いて解析しています。また、PDIファミリーの活性中心を酸化してジスルフィド結合を供給するERO1という酵素を同定し植物のERO1は複数のPDIファミリーを酸化することを明らかにしました。さらに、PDIファミリー間でジスルフィド結合のやり取りを行うことでより効率的に酸化的フォールディングが進行することを発見し、最も効率的に酸化的フォールディングを行う組み合わせのPDIファミリーを探索しています。

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