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品質設計開発学分野│京都大学 大学院 農学研究科 農学専攻

Laboratory of Food Quality Design and Development Division of Agronomy and Horticultural Science Graduate School of Agriculture, Kyoto University

研究テーマ

コムギ粉の食品加工特性とコムギ種子貯蔵タンパク質の構造との関係

 コムギ粉に水や塩をいれて捏ねると、独特の粘性と弾性がある生地ができます。コムギ粉を用いて作る食品の品質はこのような生地の特性によってコムギ粉の食品加工特性とコムギ種子貯蔵タンパク質の構造との関係大きく左右され、生地の特性はコムギ粉に含まれる種子貯蔵タンパク質の量と質に依存しています。コムギ粉に含まれる主要な種子貯蔵タンパク質は、グルテニンとグリアジンです。このうち、グリアジンは1800年代初頭にアルコール水に溶けるタンパク質として発見されました。私たちは、小麦粉から水で溶かしだすことはできないと考えられてきたグリアジンを、塩化ナトリウム処理により純水で抽出する方法を開発しました。抽出したグリアジンは約10%までは純水に溶解しますが(写真左)、ごくわずかの塩化ナトリウムを加えると分子同士が会合し不溶化します(写真右)。不溶化したグリアジンは粘度が強く、糸を引きます。加える塩化ナトリウムの量を増やしていくとグリアジン分子間の相互作用はどんどん強くなり、物性が大きく変化します。このようなグリアジンの物性の変化をグリアジン凝集体のナノスケール構造の変化から解き明かし、グリアジンを使った新しい食品加工技術を開発することを目指しています。このために、京都大学原子炉実験所 粒子線基礎物性研究部門との共同研究でX線や中性子線を用いた粒子線小角散乱分析を行い、グリアジン凝集体のナノスケール構造を解析しています。

 もう一つの主要たんぱく質であるグルテニンは、複数種類存在する高分子量サブユニットと低分子量サブユニットが分子間ジスルフィド結合により重合化したタンパク質です。グルテニンのうち特に重合度が高い成分をグルテニンマクロポリマコムギ粉の食品加工特性とコムギ種子貯蔵タンパク質の構造との関係ー(GMP)とよびますが、GMPの含量と生地の強さ(抗張力)に相関性があることが明らかとなっています。GMPの量はコムギの品種によって異なり、合成される構成サブユニットの違いに加えて、コムギ種子の胚乳細胞でのグルテニンサブユニット間ジスルフィド結合の形成が重要な役割を果たしていると推定されます。また、生地中のGMPは生地の作製中に脱重合し減少しますが、コムギ粉に含まれているプロテインジスルフィドイソメラ―ゼファミリーがGMPの脱重合に影響していることを見いだしました。超強力粉でパンを焼いた場合には生地が強すぎてパンがよく膨らまないという問題がありますが、プロテインジスルフィドイソメラ―ゼファミリーの酵素活性を阻害すると生地中のGMP量が減少し抗張性が低下して製パン性が改善されます(写真)。品質設計開発学分野では、コムギ種子の登熟過程でのGMPの形成と食品加工過程でのGMPの変化の両面について、プロテインジスルフィドイソメラ―ゼファミリーなどのタンパク質チオール酸化還元酵素との関係を追及しています。

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